天丼






俺が　二人分の　上天丼を頼んだ

一応　名のある店だったけれど

二人で二千円しなかった


中二の息子も　俺も　無口に食った

タレがいいだろうとか　冷めぬうちにとか

家出した俺を　どう思っているか　などと

言う気持ちは

もう　無かった

言葉など　今　価値は無いから


俺は　おまえと　天丼を　並んで　食っている

おまえは　飯粒一粒も　残さなかった

それが

それで

とっても嬉しいことだったよ

おまえは　家に帰ってから

メールをくれた

「ホントうまかった　ありがとう」　と

俺は

馬鹿だから　信じている

幸福な自分の人生を

地球上の幸福を



あと

あの店は潰れないから

おまえが　“お好み”　を知るころも

きっと　きっと

またな