うちには冷蔵庫が無いから　いろいろなことが判る
下の扉をあけると　健康優良児の輝く歯のように
白い卵が　ずらっと笑っていて　きっとそれは
世界の どこの人にも　幸せなことなんだと知る
（だから「玉子」とも　書くんだな！）
目玉焼き　オムレツ　卵かけご飯　あとあの　お汁の上に
ふわ〜〜っと広がる卵も・・・・・・・
ありがとう　って　心の中で叫ぶ

彼女が帰ってきたら、庫内の野菜室からレタスと水菜を
取り出して　水で颯爽洗い　シャキシャキの元気を
手にして　ありがとう　の　美味しいサラダが出来あがる
心の中で「ドレッシングは少なめで　野菜本来の味わいを」
なんて　言いながら瓶を掴んで　　
それはキンキン冷えていて　それこそが冷蔵庫の働き
こんなにまで　こいつ（＝冷蔵庫）に　人類の幸せを
サポートしてもらって　よいのだろうか、と　扉を閉めながら
考えてみたりする

そして　氷

うちには冷蔵庫が無いから　大事なことが判る
氷は　すぐ融けてしまうものだ
スーパーマーケットで買ってきた氷ほど
この世の中で　余所余所しいものはない
天然水で作られたという　そのどこかツンケンした氷は
この部屋に到着しだい　この部屋にはネイティブな氷が
いないことに気が付いて　実は　少し驚いているのだが
それを　コトリとも　音に出さないで　知らんぷりで
そしてすぐに融け始め　姿を消し始めるんだ
僕は酒飲みだが　ウイスキーや焼酎は　外でだけ
飲むことになっている　だって　流しにおいていた氷が
いつのまにか消えているんだもの！

うちには冷蔵庫が何故無いの？
お肉出して焼きたいんじゃないのか
プリン　ぷるんと　揺らして作るんじゃないの
林檎ジュースも並んでいてほしい


今は1人暮らしをしています
冷蔵庫も無いんです
欲しくも無いんです
もう少し後なんです
開くと　全員の笑顔が見える　そんな冷蔵庫は
もう少し後なんです
今は　祈っています
良い冷蔵庫を　手に入れられますように
その時は　必ず来る