賢さ




去年より私が賢くなったことは

温度によって　靴を選べるようになったこと

雪や氷が溶けて　舗道がべしゃべしゃになった時

去年は靴に水が滲みていた

足が濡れていた　


今年は　そんなことが無い

今日は　滑らない　革靴にしよう　なぞと

靴を　選べるようになったから



けれど


道のようすに無頓着だった去年は

確かに感じていたのに

今は　感じられない　何かがある



あの時は　最愛の子供たちに会えなかったから



心の中に暗いキャンバスがあった

しじまの中に五線譜が生まれた

私は靴の中の水など感じ得なかった



永遠に触れられないような

心の中で　研ぎ石が　ざらついたような

胸が痛むような　時刻

そいつを忘れることは

賢さなのだろう


心の墓を見つけること