邂逅

　　　　　勇気が出る映画　　　元気になれる音楽　　　思いつくすべてのものを詰め込んでも　　


　　　　　よんじゅうぐらむ以下だ


　　　　　耳に差し込む点滴　　　電車でも　地下鉄でも　 バスでも　　　その白いコードが　　

　　　　　
　　　　　 別々の生命維持装置を　　むすんでいる


　　　　　世界は　とても　 　孤独化した


　　　　　

　　　　　狂った男は　　その芝生の広場で　　おそうじローラーのように　転がり続ける

　　　　　
　　　　　時計台の鐘が　　いつもより少しだけ　澄んでいた　　　が　　　誰も気が付かない


　　　　　太陽が真上になる頃　　　彼女は彼の上にやってきて　大きな影になった


　　　　　男の頭から　生命維持装置を　引き抜いて　　「やあ」
　　　　　 「やあ」　「ひさしぶり」


　　　　　青空の玉手箱から　　鳩がたくさん飛び立って　　　男はまぶしすぎると思いながら　　

　　　　　 泣いた


　　　　　
　　　　
　　　　　それからは　彼女がずっと　耳元で　詩を　読んでくれた　　　　優しく　　歌うように