コーヒーメイカー　980円


さあ皆さん　今夜も　
値段以上の働きをしてくれるモノに 感謝する　
お時間がやってまいりました

今日ご登場は
コーヒーメイカーくん　９８０円！

あの量販店で
驚きの出会いから早１年
君は　おおかたの予想を裏切って
毎日ブツブツ言いながらも
壊れなかった

なに、ブツブツでは無く ブクブクだと？
確かにそうか

自分は９８０円の存在であるが
自分の双肩には何万円のコーヒーでも抱えられるのだと
いつも主張していたが

ご主人様は
ささやかで　安価な　喜び以上は
得てはいけないと　自分を律していたので
いつも　赤い袋の　大量生産の　珈琲の粉との
おつきあいでした

しかし　この１年
君が一番　この部屋の香りを支配した

でも　君の器は小さかった
マグカップ２杯半が限界で
すぐ飲んでしまうから
保温機能は　ほぼ無意味だった

君は　このあとの引越しでも捨てないよ
君は　気が付いていないけれど
ご主人様の人生の中で
最も　大切な時期に　ブツブツ言いながらも
つきあってくれたから
あ　そうそう　ブクブクね

そのブクブクの音が
寂しい夜に埋めたしじまは
どれくらいだったろう

君の無頓着でマイペースな仕事ぶりは
僕には　とても　あたたかかった