僕のパソコンが壊れた

僕のパソコンが壊れた

僕がいないうちに　
　

ケースの内側も　外側も　みんな　あっつくして

もしかして　火事なの？と　妻を驚かせる　焦げ臭さを出し

彼の頭脳冷却用のファンはおそらくピクリとも回らない中で



誰にも知られず


僕のパソコンは　壊れた



とても長いつきあいの友だった


離婚したときに、僕と一緒に飛び出してきたヤツだった


そして、いつも静かに、　僕の願いに応えて、


笑わせてくれた


その僕のメインパソコンが　壊れたんだ



僕のパソコンが壊れた

僕がいないうちに

僕の油断が原因だ

僕のメンテ不足が原因だ

電源ユニットが、もうそろそろ寿命だ　ぐらい　わからない　僕の想像力の無さが原因だ



「形有るものは必ず壊れる」などと言う･･･

一般論が

一番似合わないのが

そう

かの素晴らしきメインパソコンの　この哀しい最期なのだ！！

僕の彼は　僕の歴史と努力の　まるで「版画」のような存在だ

ヤツが元気に動き、やりたいことに、すぐいくつかの選択肢を見せてくれるのは

僕が彼という花に、毎晩あげていた、清らかな水のおかげだ

思い出のインストール！！



僕は彼とともに　凄まじく長い時間を過ごした

彼の形　彼の能力を整えるために

僕は何度も徹夜した



それなのに

彼が死んだ時　僕は横に居れなかった

だから　彼は灼熱の中で　孤独に逝った




明らかに


僕の中で　一つの歴史の「節」が終った

あまりにも大きな何かを　

あまりにも大きな啓示を

僕に示そうとしているものが　あるのだろうか？




死んでも、数ヵ月後に戻ってくるクローンのように

彼はあと２週間後に、僕の手によって戻される


同じマザーボードを入手したのだ

ハードディスクに損傷が無いのを確認したのだ



しかし、戻っても終ったままだ、ということはあるんだ

映らないスクリーンが

何かが終ったと　　何かを始めよと　

僕に啓示している


それに　感謝していいのか　懺悔していいのか

僕はまだ

死という困惑の中に　



どぷりとはまっている